僕は、親知らずの抜歯をするならなるべく早くした方が良いといつも話している。
抜歯は、腫れることもある。痛みも伴う。しかし、親知らずがある事でその手前の歯がむし歯になったり、年齢がいってからの抜歯後に歯周ポケットが手前の側の間に残ってしまう。
結局、手前の歯の寿命を削ることになる。
すでに僕の親知らずも30代で抜いた。
さて、歯科医師によっては、抜くリスクを過度に説明する人もいる。リスクがないと言えなくもない。
リスクの1番は、下歯槽神経麻痺だろう。
下顎の真ん中を通る神経が、下歯槽神経だ。(黄色い線)寄り添うように歯が横たわっている。
40才すぎて、難易度の高い抜歯は他にもリスクがある。骨と歯が癒着して更に難化しているからだ。若い時に抜いた方が良い理由である。
親知らず 抜歯のテクニック その1
この図の歯を抜こうとすると、青いラインで削ることになる。削りすぎると神経を傷つける。口の中の1番奥の奥深く。削り始めると先端の様子は、見えない。

水と血に包まれた術野の為、治療の難易度は上がる。

しかし、この削る時にも実は、直接は見えなくても指標がある事は知られていない。
解剖学の教科書には、載っているが
口腔外科の教科書には、載っていない。

歯は、エナメル質・象牙質・歯髄で出来ていますが、一番硬いモース硬度7の部分は「エナメル質」です。ちなみに象牙質はモース硬度5~6です。とても硬いエナメル質と象牙質で歯髄を守っています。

とネットには載っていた。

歯の断面を見ると、丸い。周囲がエナメル質、内側が象牙質だ。
親知らずを、抜歯するために分割(青いラインで削る)していると始め、エナメル質、その後象牙質になる。
この歯でいう所の、黒い面を削り落とすと、最後にエナメル質が残される。(赤い線のあたり)
この図の上から包丁を入れるイメージでも良い。
エナメル質→象牙質→エナメル質
つまり
硬い→やや柔らかい→硬い となっていくイメージが伝わるだろうか?
モース硬度の変化で言うと
7→5→7 となる。
削れ具合で
硬い→やや柔らかい→硬い 
再び硬くなったら止めれば良い
すると赤いラインで止まる。
よく削れるドリルで削ることで、硬さの違いが指先に伝わる。
下側で硬くなったらドリルの動きを止めるのだ。
その次の瞬間、「割」が入る。
青い線の切り口は、なるべく奥、溝は太く削る。
このポイントを理解すると、抜歯の時間も掛からなくなる。
なぜか!躊躇しないで一気に削り進むことができるからだ。
親知らずの抜歯を上手にするポイントは、いくつかある。今日は、その中の1番知られていない解剖学的な知識を技術に変える方法について解説しました。
下田孝義
医療法人社団徹心会ハートフル歯科