北欧諸国(スウェーデンやフィンランド)は今では福祉先進国として世界中に知れ渡っていますが、その昔はむし歯天国でした。国民1人当たりの年間砂糖消費量は日本の2倍です。(日本は19.4kgで世界143カ国中85位で欧米諸国に比べて極端に少なく肥満の方も圧倒的に少ない)
むし歯氾鑑期に国家が考えたのは、日本のように歯科医師を大量生産して治療を優先させることではなく、予防を国家の政策として推進させ、学校や地域保護センターなどで健康医学教育の中でむし歯を防ぐことに力を注ぎました。すなわち「予防」です。単に歯科医院に行く習慣を「治療から予防へ」と国民に理解させ、さらに幼い頃から歯の健康維持に関する教育を大切にしました。
フィンランドでは小学校から授業の一環として保険指導員による歯の健康についてのレクチャーがあるため、自然と「歯の健康についての知識」が身に付いていきます。また自治体の保健センターでは、出産前にだ液検査をして、細菌の量やレベルにより個別のリスク管理とキシリトール摂取を指導します。
要するに子どもの頃から歯と向き合い、自分の「むし歯に対するかかりやすさ」を理解させる仕組みがあります。
スウェーデンにおいても、こどもの頃からむし歯予防についてきちんと教育をします。まず3歳の時、健診のため歯科医院に呼ばれます。日本のように学校でむし歯を見つける「集団健診」はありません。
むし歯予防にはかかりつけ歯科医が長い目で見守る「個別健診」が最も効果を発揮すると考えられています。つまり、むし歯をなくす本当の治療とは、その人、その場所に応じた個別の対応なのです。
このように歯の健康を保つために歯科医院の利用を推奨し、幼い頃から歯科診療に慣れさせ、今では90%以上の小中学生は毎年メインテナンスを受けています。またフッ化物の応用と個別リスクに配慮した予防メインテナンスが威力を発揮することも証明され、現在は出生前の歯科予防までも充実しています。(母子感染のリスク)
そのため北欧ではむし歯ゼロのこども達がほとんどです。
12歳児のむし歯経験数は日本が2.4以上であるのに対し、フィンランドは1.1%、スウェーデンは1.0%。
15歳時になると日本は6.6%、フィンランドは3.0%。
また1本もむし歯のない人が、日本では「25人にたった1人」しかいないのに、スウェーデンではなんと「5人に1人」という高い割合です。
わたし達日本人は毎日歯を磨く人が96.2%以上もいて、空気や水がキレイな環境で育ち、お風呂大好き、匂いに敏感と世界に類をみない清潔好きの国民です。しかし、成人の口内環境やむし歯経験数は先進国の中で比較にならない程悪く、その結果、70歳以上では2人に1人が総入れ歯をしようしています。
要するに今までのむし歯予防の常識「食べたら歯磨き、砂糖をとらない、早く治療」はどこかが間違っており、削らずにむし歯を治す新しい医療「自分のリスクを理解し、控えめに処置、その後経過観察」に方針を転換し、「発育の中で歯の健康を守り、育てる」考えの普及が望まれます。
わたし達もこどもの歯を家族のみな様とともに見守り「こどものむし歯ゼロの三鷹」を目指したいと思います。