小児の咬合を守る 〜乳歯冠という選択肢〜
小児の咬合を守る 〜乳歯冠という選択肢〜
こんにちは!ハートフル総合歯科グループの歯科医師、稲田英里子です。
今日は乳歯冠という小児歯科の治療についてご説明していきたいと思います。
乳歯の虫歯治療には、乳歯冠という方法があります。銀色の姿をしており、白い歯をできるだけ保ちたい現代においては時代を逆行するような紹介ではありますが、大きな虫歯があり、白い樹脂(コンポジットレジン)だけでは歯が崩壊してしまう場合に、乳歯冠が適することがあり、この治療を勧めることがあります。
なぜ大きな虫歯には乳歯冠が必要なのでしょうか?
それは、
・子供も意外と咬む力が強く
・奥歯の数が少ないため
です。子供たちにとっては、白い樹脂は見た目が良く、小さな虫歯には適していますが、大きな虫歯には耐えられないのです。
もし、白い樹脂で治療した歯が頻繁に欠けてしまい、何度も歯医者に通うことになると、最終的には歯の神経を取らざるを得ない状態になってしまいます。乳歯は神経を取ると脆くなり、それでも白い樹脂で詰め物を続けると、歯の咬む部分がどんどんすり減って咬合高径(上顎から下顎までの距離)が極端に低くなってしまいます。
こうなると咬み合わせが変わり、顎の回転も生じます。その結果、シビアに歯並びが悪くなる原因となります。このような状況を防ぐためには、乳歯の形を保持することが非常に重要です。大きな虫歯の場合、現在のところ乳歯冠が適した治療法となっています。
また、白い樹脂の欠けやすい特徴から、欠ける部位は隣り合う歯との間の部分が多いため、これが欠けると歯の移動が起こり、生え変わり後の永久歯の歯並びにも影響を及ぼします。隣り合う部分の詰め物が欠けることは避けなければなりません。その点でも、乳歯冠は適しています。
乳歯冠は欠けにくく、外れにくい特徴があり、再治療が少ないので、治療の頻度を減らし、お子様の虫歯の予防にも役立ちます。
生え変わりについてよく質問をもらいますが、神経を取らない場合、乳歯冠は通常の歯と同じように生え変わります。一方、神経を取った場合は、通常よりも1年半ほど早く生え変わることが報告されています。
治療時には、今あげたようなメリットや、いかんせん銀歯になるというデメリットも踏まえ、歯科医師とよく話し合って治療を進めていきましょう。