妊娠前から妊娠期の歯科について②
こんにちは、ハートフル総合歯科グループの歯科医師、稲田英里子です。
前回に引き続き、妊娠前から妊娠期の歯科治療について大切なポイントをお伝えしてきています。
今回はつわりの時期の歯磨きと、レントゲン写真の被曝量についてのお話をします。
1. つわりの時期の歯磨き
つわりで歯磨きが難しいときは、無理をせずにまずはうがいを心掛けましょう。
食べかすを取り除くなどできることから始め、体調の良いときをねらって歯磨きを行いましょう。
食後すぐに磨くことにこだわる必要はありません。
2. レントゲン写真の被曝量について
・歯科用CTの被曝量は約0.1mSv程度
・お口全体を写す大きなレントゲン写真(パノラマ)は約0.003mSv程度
・部分的な写真(デンタル)は約0.001mSv程度
(パノラマとデンタルについては当院はデジタルのものを採用しているため、アナログの被曝量の1/10になっています)
です。
東京からニューヨークまで航空機に往復で乗った場合の放射線量(約0.2mSv)と比べても非常に線量が低く安全であることがわかります。
さらに、歯科のレントゲン撮影では、被曝するのは首から上の部分のみです。
胴体部分は防護エプロンを着用した状態での撮影が行われるため、赤ちゃんへの被爆リスクはほとんどありません。
歯科治療をするにあたっては、病状をしっかり把握するためにレントゲン写真の撮影をおすすめすることがあります。
ただ、「レントゲン撮影を受けたせいで何か起こったらどうしよう」と極度に心配になる方は、レントゲン撮影を避けるのも一つの手です。ストレスが胎児に悪影響を与えてしまう恐れがあるからです。
ご自分の状態に合わせて、歯科医師と相談しながら適切に治療を進めていきましょう。大切な赤ちゃんのためにも、健康な口内環境を保つことはとても重要です。
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さて、ここからはもっと詳しく赤ちゃんへの被曝の影響を説明します。興味のある人は読んでみてください。
✳︎赤ちゃんへの被爆リスクについて
日本産科婦人科学会が妊娠中の放射線被曝の赤ちゃんへの影響について、ホームページにて解説しています。
○胎児の発育期と被曝の影響
胎児の発育期には、着床前期(受精0~8日)、主要器官形成期(受精9日~60日)、胎児期(受精60~270日)の3つの時期があります。それぞれの時期によって、被曝による影響も異なります。
– 流産:125mSv以上の被曝では、着床前期や器官形成期に流産が多く起こることが知られています。
– 奇形:125~250mSvの被曝では、器官形成期に奇形が起こることがあります。各器官の細胞増殖が盛んな時期に被曝が重なると奇形のリスクが高まります。
– その他の影響:発育遅延や精神遅滞、癌なども被曝により起こる可能性があります。ただし、低い被曝量ではこれらの影響はほとんど見られません。
(日本産婦人科学会ホームページより)(本文では1Gy=0.8Svとして換算しています)
日本産婦人科学会は、現在のところ125mSv以下の胎児被曝はほとんど問題はないと考えて良い、としているようなので、
被曝線量が一番大きいのは歯科用CTですが、被曝線量は約0.1mSvなので、1250回撮影すると合計125mSvになり影響が出る可能性がありますが、1250回CT撮影することはまずありえません。
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