「サイナスリフト」と「パラタルトランスサイナスリフト」について
名前が似ていて、よく分からないと思うので模型で解説をしていきます。
オペの写真では、血が見えてしまいます。
僕の歯医者になって4年目くらいの目標は、
“インプラントを出来るようにする。外科に強くなる”でした。
3年目に医療法人の分院長を経験し、保健のルールを覚えて毎月の数字を見ることを理解しました。
しかし、歩合給で、月末に数字に追われる生活が嫌になりました。
またその生活は、疲れることも理解できました。
1番嫌だったのは、歩合給だと治療計画が患者さん中心でなく、自分中心=売上中心になっていくことにも気付きました。
本当に自分のやってあげたい治療方針ではなく、法人というか、当時の理事長の方針に沿って治療していました。
自分の頭で考えたらハッキリとおかしいと思うようになりました。
固定給で診療に集中したいと転職をしました。
自分の診療スキルを上げる為に、時に当時の院長に「前立ち」してもらいインプラントオペをしました。
院長の手を止めて、2人がオペ場に入ると診療室は、ガランドウになりました。外来が止まるからです。
売上が、下がることも院長も理解をしてくれていました。
その分お給料も上がらなくても良いし、他の時間帯に効率的に診療をする事を心がけていました。
そんな診療スタイルに変わったのです。
歩合給なら、倍くらいの給与なったはずです。
でも、診療が楽しかったので気になりませんでした。
時に入れ歯の治療をするのに、普段より多めの時間をかけることもありました。
入れ歯の型取りをこだわっていた時期です。
それも院長に許可を取り、集中して取り組みました。
院長のオペで新しいことすると聞けば、公休日に出勤して見学したものです。
結局、タイムカード押さずに働いていました。(笑)
それらも青春な感じですね。
今の時代には、通じない良い意味での「やりがい搾取」だったと思います。
今の若い先生には、そこまで求めてはいけないことも理解しています。
そんな時期を経て「サイナスリフト」という、頭蓋骨の側面紫色の部分を削って鼻の穴の粘膜を剥き出しにするオペの技術を学んでいきました。
開業して初めの5年くらいは、上顎の奥歯には、よくサイナスリフトをやっていました。
しかし、すっごい腫れるんです。
そこで、新しい技術の取得を目指すことになります。
8年前から、ボストンにあるバイコンインプラント研修センターに毎年通っています。
そこで、歯のなくなった部分の緑色のところから鼻の穴へアプローチする「パラタルトランスサイナス法」と新しい技法のヒントをもらいました。
緑色の部分からアプローチするのは、手前の歯牙で見えなかったり
そもそも骨の奥底にある鼻の粘膜を触るので術野が狭く、暗いので
従来の概念では、治療困難な部位とされていました。
しかし、近年歯科医師の頭部につけるライトが明るくなり、無影灯のLED化、ユニット自体の背板の角度。
専用の剥離子が発売されたことも大きいです。
しかし、その使い方のノウハウは、あまり公開されていません。
色々なものが変わる事で、従来では難易度の高い術式が簡素化されるようになったのです。
この術式は、「インプラント治療のイノベーション」だと思っています。
それにバイコンインプラントが、短い(最短5mm)で、上顎洞(鼻の穴)に落下しないようにパラシュートのような傘の販売がされていることが相まって多くの症例で、低侵襲で治療可能になります。
インプラント手術も大きく進化しています。
まだまだ先はあると思い、未来に向かって、アンテナを張っていきます!
全ては、患者さんの未来の為に・・・
下田孝義