月星先生という大家が、自家歯牙移植という本を書いてくださった
名著である。歯医者になったら一度は興味を持ち、手にする本の一つであろう。

ボルトを入れるインプラントと比較して、自分の歯を利用する、安全な治療法である。

当時、戦慄なデビューを飾り、日本中に広まっていった。

僕の中での移植の定義を本の記憶から書いていこう。

1.35才以下
2.非喫煙
喫煙者は、血流が悪く組織再生力が弱い
3.機能歯
噛み合って、使われている歯は、歯根膜がしっかりしている。
4.抜歯窩
抜歯直後は、歯根膜も骨側に残っていて、再生力が高い
5.大きさが合う
そもそも、骨の幅、深さと移植歯の大きさが、大体同じくらいが望ましい。
大き過ぎる親知らずは、行き場がないことが理解しやすいと思います。
6.むし歯や歯周病に犯されていない歯が、移植対象歯となる

この5点を審査している。
満点である必要はないが、概ねこの条件に合わないとオススメしていない。

水平埋伏の親知らずを移植して欲しいと言われる。文献では、そういう症例も見たことあります。
しかし、非機能歯で歯根膜が萎縮していたり、抜歯時に細々と砕いて抜くことになり、移植歯として形を維持できないことが多い。また、年齢的に移植に適さない方も多い気がします。

若年者が、むし歯になった第二大臼歯を抜いて、横になっている親知らずを無傷で抜いた上で、その場で第二大臼歯に移植するのであれば、水平埋伏智歯の移植も可能なのだろう。

近年、CTスキャンで受容床の大きさと親知らずの大きさを比較したり、親知らずの形を3Dプリンターでレプリカとして作り、移植手術中に受容床(移植窩)を先に形態修正して、形を整えておき、親知らずの方は、抜歯直後に移植する技術が進んできた。

抜歯直後に移植するメリットは、歯の周囲歯根膜を空気に触れてダメージを受ける時間を極力減らすことが可能になるからです。

従来は、抜歯して、何度も試適しながら大きめにゴリゴリ削って時間を浪費し、歯根膜を乾燥ダメージを与えることになる。移植窩に出し入れする際にも骨壁と当たって傷をつけることになる。

そうそう今は、インプラントのドリルを使い、事前に歯牙の形態に合わせて削れるように事前に太さ何ミリのドリルを何ミリ削る。その後、太さを変えて何ミリ削るなど、ドリル使用順序も事前に計画が可能になっている。

受容床の形成も(骨の形態修正)も時間を極力減らし、適合の良い受容床とすることが可能になった。

(YouTube url)

最新の技術で、歯根膜のダメージを減らし成功率や生存率を高めようとCT、3Dプリンターを応用している。

こういうデジタル化されたことにより適応範囲は、広がっていくのであろう。
自分の歯が何よりも大切。

可能であれば、一度CTスキャンで親知らずを移植可能か審査させて欲しい。

自費治療となるが、自分の歯が再利用できる可能性については、調べてみないと始まらない。

抜歯した歯を保存して、未来の歯科医療にかけるのも一つの選択だ

全ては、患者さんの笑顔のために・・・

下田孝義

医療法人社団徹心会ハートフル歯科