親知らずの抜歯
前回のブログ掲載からわかる新しい知見を合わせると下記のようになります。(臨床応用顕微鏡歯科学会より)
神経に近い場合の親知らずの抜歯は、「2回法か歯冠切断法」になります。
どちらも手技的には似ていますが、対象年齢を絞ることによって変わります。
分割され残った親知らずの歯根は、始めの半年が一番動きやすく、3ミリ程度の移動が期待できます。
3年位すると、もう動きません。
35才以下では動く可能性が高いので、歯が移動したところで歯根を抜歯します。
2回法抜歯の1回目の抜歯後は、歯根を抜かない選択をした場合でも、最大3年の経過観察が必要になります。
「歯根の移動、骨の再生」についてみていきます。
数字を覚えてください。
40才を過ぎると歯は動きにくくなります。
そこで、歯冠切断法になる可能性を考えて、1回目の抜歯の際には意識して歯冠エナメル質を全て削り取る必要が出てきます。(残存エナメル質は感染源)
35才くらいから動きにくくなることを考えてエナメル質は除去する習慣が必要です。(個人差が大きいので注意)
また、第二大臼歯がペリコや歯周病に侵されていると親知らず抜歯後、歯冠除去後に骨の再生が円滑に行われない可能性があります。
第二大臼歯の遠心ポケットがすでに歯周病菌に侵されて歯根膜による骨の再生が進まないからです。
理想的に歯冠切断法を行う際には、エムドゲインを注入する必要があります。
上記の表のように下歯槽神経に近い場合は、35〜40才を目処に親知らずの抜歯2回法でなく、歯冠切断法を意識した歯冠除去が必要とされます。
歯根が動かない場合にどうするか?
という答えがなくて、「えい、ヤァ!」と抜歯する時代にも終わりが来たって事ですね。
全ては、患者さんの笑顔のために・・・
下田孝義