CAD/CAM治療は、歯肉縁上が基本です。

10年間ずっとそうやってきました。

しかし、ジルコニアという高強度、高審美性の補綴物が現れてから概念も少しずつ変わってきました。




一見普通に見える支台歯形成ですが、これはCAD/CAM治療だとバツでした。



よーく見ると、完全に歯肉の下に歯牙の削り面(歯肉縁下)があります。

歯肉縁下では、出血や滲出液に邪魔されてしっかり被せ物と歯が接着せずに外れる、割れるなどのトラブルに見舞われてしまいます。

禁忌症例でした。

 

現在は、このように“レーザーや電気メス、圧排糸、麻酔薬”を駆使するとカメラで撮影しても境界線ははっきり見えます。

見えるように撮影可能なテクニックが確立されました。

はっきり線が見えます。

これならCAD/CAMはデジタル歯科技工で作製可能です。

しかし、問題があります。
接着できないんです。
滲出液、血液です。

そもそも被せ物を装着するには、接着依存と維持依存の2種類の装着方法があります。

維持依存とは、被せ物と歯牙の間でも摩擦抵抗や引っかかりを利用して行います。

接着依存とは、文字通り接着剤でくっつけます。

CAD/CAM製の歯は、内面がどうしても構造上適合が悪く、維持依存になりません。

また、強度がやや低く、接着することで強度が増す理屈で成立させています。

昨今のジルコニアの進化によって「高強度、高審美性」となりました。

元々ジルコニアは、20%大きく削って焼き固め小さくなってピッタリになる工程を経ています。

なので、内面の精度が著しく向上しています。

「高強度、高審美、高精度」の3点が揃ったのです。

結果、維持依存型の被せ物に進化します。

CAD/CAM製の被せ物でも、維持依存型が利用が可能になりました。

アナログで歯を作る時代の麻酔薬や電気メスを使用して境界線を見える化する。

アナログのテクニックを使用してカメラ撮影する。

デジタル化された歯の作製方法に移行する。

アナログのテクニック、デジタルの製作方法の融合です。

治療の際に、歯肉縁下にしかならない場合の症例に10年間悩んできました。

アナログ治療に戻って、被せ物を作る時もありました。

しかし、これからはジルコニアを使うことで、デジタル化された最新治療を応用することが可能になりす。

噛み合わせの調整が少ない、来院回数が少ない、CAD/CAM治療の応用範囲がまた広がった気がします。

全ては、患者さんの笑顔のために・・・

下田孝義

医療法人社団徹心会ハートフル歯科