サイナスリフトのリカバリー
前回のブログで、30才頃の目標にしていたサイナスリフトは、腫れて患者さんがツラいからと書きました。
実は、辞めた理由がもう一つあります。
上顎骨の側面に1.5cm×2cm 程度は骨窓を開けます。
それは、結構な大きな穴になります。その骨窓を支えているうっすい粘膜を残して骨片を除去します。
そのあとゆっくりゆっくり上顎骨内の粘膜を剥がしていきます。
かなり神経を使う手術になります。
途中、骨面がザラザラだったり隔壁という壁があり、この壁を壊さなければならなかったり乗り換えたり。
正面からしか視野がないのに側面がら覗き込みます。
唇が硬いと引っ張っても視野は広がりません。
「あっ、とつまずく。」粘膜が破れ始めます。
その破れは、うまく処置が進むと縮んできます。
処置を間違えると大きくなっていきます。
金魚すくいの紙の輪っかのようです。
心臓の鼓動は、ドンドン大きくなっていきます。そんな経験を何度もしました。
本当に大きく破れた場合は、上顎骨の中に破れた粘膜。
吸収性の糸で骨縁に抜いつけます。
それが、この7-0バイクリルです。
もちろん骨は、針を通しませんので小さなドリルで穴を開けます。
その穴を通して、粘膜を手繰りで寄せるのです。
小さな針状の孔が、拡大鏡越しに見えると背筋に電気が走ります。
そういう時は、必ず 一旦術野から目線を外して天井を向きます。
そして、深呼吸。急に状況は悪化しません。
その後の処置をイメージして、再度 視線を戻します。
そんな流れでリカバリーをしていきます。
薄氷を踏む思いとは、このオペのことを言います。
張り裂けそうな緊張感の中、進めていきます。そんな空気です。
今は、パラタルトランスサイナスに手技が変わったのでそんなに大きく骨窓を削ることはありません。
その分ストレスも減りました。
たまたま、昨日のオペでもパラタルトランスサイナスをしました。
過度な緊張感もなく、術者のストレスも少ないです。
インプラント手術は、途中で色々なことが起きます。
終わりよければ全て良しとなるように、あらゆる状況の変化に対応する力が求められます。
経験や知識で、それをカバーしています。
昔と比べて、今は、短期間で治療が進み、低侵襲性手術に変化しています。
骨造成なども材料だけでない工夫も取り入れています。
またの機会に記載します。
全ては、患者さんの笑顔のために・・・
下田孝義