今日も歯根破折の新患者さんがいらっしゃいました。

黄色と青色のどちらの歯でしょうか?

正解は、青色です。

青色の特徴は、差し歯になっていて、歯が長く見えるところです。

何で、長く見えるのかと根っこの位置が内側に生えていた歯を差し歯で前に出して正面から見て正常にしたからです。

前から見るとそれなりに普通に見えます。

20年前の僕だったら、何の疑問も持たなかったものです。

歯並びを被せもので形を変えてキレイにする。補綴矯正などと呼んでいました。

根の位置を変えずに、方向だけ変えて造作して前歯を作ります。

結果、数年後に力学的に無理がかかる前歯の歯質が割れてきました。

緑の部分が破損していました。

長いスパンで治療経過をみると、正しかったのか?疑問を持つ症例です。

具体的には、大きく唇側の青い歯質が破損しています。

残念ながら、抜歯となってしまいました。

破折部が広く深く、破折片もないために、接着治療の適応にはなりませんでした。

あったとしても、抜歯時に唇側の骨(薄黄色)が取れてきてしまったので口腔外の接着再植に不適応でした。

この症例からの学びは、
・差し歯で歯の方向を変えて歯並びを良くしても、長期的には力学的に無理が残り一時的に審美性が向上しても破折になってしまうこと。治療開始の時点で、矯正を念頭におくことが大切だと思いました。
・破折歯への対応として、破折片の存在、抜歯時の既存骨の保存など改めて治療条件が大切だと感じています。
適応症は、十分な審査、診断の上治療へ進む必要性を感じました。

時間軸という、学生時代になかった概念を改めて認識しています。

患者さんからの学びは尊いと痛感しています。

全ては、患者さんの笑顔のために・・・

下田孝義

医療法人社団徹心会ハートフル歯科