破折歯・接着再植治療のリスク
最近、破折治療を希望する方がよくいらっしゃいます。
HPや本を見てきてくれているようです。
そこで、破折治療について継続的に症例を報告していこうと思います。
根管治療中に、歯が真っ二つになってしまっていました。
破折歯の接着再植治療のリスクは
・一度抜歯してから接着するので、うまく抜歯できないと歯が粉々になってしまう場合があり、その場合は抜歯のまま終わってしまう。
・接着再植治療をしても、5〜10年程度しか使えない。もっと早く悪くなることもある。
などをしっかりと説明して行っています。
この方は、どのくらいの確率で抜歯で終わるのですか?と何度も慎重になっておられました。
絶対の医療はないので、必ずしもうまくいかないと場合について話しています。
「抜く途中で、歯が潰れたことがあります。」僕の歯科医師経験の中で「何回かだけです。」と返事をします。
統計をとっていないし、答えようのない質問です。
ほとんどうまくいくので
・無理そうな場合は、ムリです。
・ダメ元の治療はないので、うまく抜けた場合には接着してみますか?
など、言い方を変えて、説明をしています。
これを汲んでもらうしか、説明のしようがないのですが。
今回は、下の写真のように、クワガタのように歯が骨を掴んでいるように生えていたために折れるリスクを考えていました。
ただ、遠くからきて、どうしてもなんとかして欲しいと訴えられたので、なんとかしてあげよう!と奮起して破折治療を受けました。
でも、折れそうだなぁ。と心では、叫んでいましたが。なんとかなるだろうと。
普段は、出番の少ない「細いストレートのヘーベル」が大活躍!
ヘーベルとは、歯医者さんでよく使う、抜歯の道具のことです。
スコップのような形をしていて、歯をほじくり出すイメージの器具です。
ヘーベルの使い方
「くさび、回転、テコ」のヘーベルの三要素と言います。
新人の先生は、テコの原理で抜歯をすると思っているのですが、僕は、「回転を使って抜歯をするんだよ」って指導しています。
しかし、今回は、「くさび」を中心に破折歯を抜いています。
くさび、くさびって、器具を押し込むように使いました。
この後、根管充填して、先端を2mm程度カット。感染している可能性のある部分を切除しました。
最後にスーパーボンドで破折を修復して、硬化後に歯を戻しました。
噛み合わせを調整して
「生着してね。」と祈りながら縫合する!
これが僕の手術終わりの縫合時、心の中の儀式。
その甲斐あってか、多くの人はうまく生着します。願えば叶うものですね。
全ては、患者さんの笑顔の為に・・・
下田孝義