顔貌について診断を可能にする フェイススキャン
顔の正面、横顔を、人間の目で捉えることは可能です。
また、三面鏡を使用すると後頭部の様子を理解することもできます。
しかし、分かりやすいところで言えば顔の凹凸や前歯の出や、見え具合を表現したり、確認、評価することは難しいです。
2014年にシロナ社から同じくフェイススキャンというCTに搭載するカメラを使って撮影する物が発売されています。
しかし、ソフトウェアの開発が進まずに歯科臨床に応用し、活躍するには至りませんでした。
その頃から僕は、注目の診断器具として期待していました。
それから10年が過ぎて、フェイススキャンの機械が独立して、韓国、中国、イタリアから発売されて日本でも購入可能になりました。
2022年のCADCAM学会でも話題となり、人気を博していましたが、利用方法や撮影した後使用するソフトの問題などが解決出来なかったために、僕自身も購入意欲が現れませんでした。
10年前に、同様の商品を購入して冷飯を食べることとなったからです。
早めに動き過ぎるとヘマをします。
一番くじを狙い過ぎると起こるイノベーションのジレンマです。
新しいものに振り回されて、ババを引きます。
10年を時を経て、やっと日の目を見ることとなりそうです。
フェイススキャンは、笑った時の前歯の見え方、CT上の顔と骨との位置関係を表示します。
その結果、笑顔を作る際に角度が曲がっていたり、真ん中がズレているなどを検証することが難しかった問題を解決してくれるでしょう。
また、ボトックスという筋肉のバランスを整える薬を使用することで、歯茎が見え過ぎる人、食いしばりのある人なども調整することが可能になっているそうです。
そのすべての診断は、顔貌と言えるでしょう。
顔貌の診断こそ、今求められている歯科治療の進化系だと考えます。
そこで、どうやって診断をするのかを解説します。
前髪は、顔全体が取られられるように整えて、「いー」と言う声と共に、最大のスマイルをしてもらいます。
その画像を、口腔内カメラを使用して両側の小鼻を含めて、前歯を撮影することがポイントとなります。
口腔内歯牙データと小鼻を含めたスマイルデータと骨を含めたCTデータを「EXCOCAD」上で合体させる事で多くの診断が可能になります。
インプラントシュミレーションでは、歯牙、CT、口腔粘膜、未来の被せ物(セラミック)が合体してインプラント治療診断が、大きく変わりました。
今度は、顔貌が加わり更に大きく前進したのです。
これは、フェイススキャンと歯牙データを合わせて、インプラント被せ物の左右の長さを診断しています。
右だけの歯を見て作るとキレイに見えます。
しかし、左右の歯を比較するとおかしく見えます。
顔全体のバランスを見るともっとおかしく見えるという、パラドックスから脱出出来ます。
顔貌情報を組み込む事で、咬合平面と左右の目高さ、顔とのバランスが三次元的に調整することが可能になりました。
具体例として、フェイススキャンを利用して、インプラントの歯の形をより美しく作る最新のセラミック製作方法を学んできました!
フェイススキャンと口腔内カメラデータを合わせて診断用の資料を作製します。
理想は、カンペル平面で作ることを学生時代に学ぶのですが、それをセラミックを作る上で再現しにくいのが現状でした。
頬粘膜の内側にある、奥歯の位置を顔貌とのバランスで美しく製作することは、困難でした。
しかし、この資料を作成することで、理想のカンペル平面と咬合平面とを合わせて作ることが可能になります。
笑った時に奥歯がどう見えるか、左右比較してどうなのか?
従来の石膏模型だけで作る、インプラントの被せ物、セラミック製作方法には、唇や頬、顔貌がありません。
しかし、それぞれをデータ化する事で本人の歯、口元に合わせた形を意識したセラミックを作ることが可能になりました。
プラスチックを使って作り、試適して何度も作り替えていたセラミックの歯作りが、データ上での試適が可能になり、完成度の高い初期提案が可能になりました!
ハートフル歯科医院への導入も近いです!
全ては、患者さんの笑顔のために・・・
下田孝義