「痛くない・噛める 入れ歯」についてその⑤(上顎の総義歯のポストダム)
上顎の総入れ歯の後縁にはポストダムという突起(青丸)がついています。
そこは、解剖学的に硬組織と軟組織の境界で、上顎骨の裏打ちのない場所です。
上顎を触っていくと、奥の方に柔らかくなる場所があります。
そこに少し盛りあがった入れ歯の端っこが強く当たり、隙間から空気の侵入を防ぎます。
総入れ歯を作る時は、入れ歯と粘膜の間の水が凝集力を出してくっつくと言われています。
また、吸盤のように噛む力で上顎に押し付けられ、空気が抜けて陰圧がかかり吸着する、この原理でくっつきます。
・ガラス板とガラス板の間に水を垂らすと、くっつく→凝集力
・吸盤のように圧接すると、くっつく→陰圧
・唾液の粘性(あり>なし)
その組み合わせによって入れ歯はくっつくのです。
どれが欠けても外れやすい入れ歯になります。
また、粘膜は押すと引っ込む為に型を採ると毎回違う形になってしまい、正解がないことも難易度が上がる原因です。
正確な形を型取りするのは難しいということですが、正確な型取りが大切なことは言うまでもありません。
ここで話題にしたいのは、正確な型採りをしてもプラスチックは変形するので上顎の後ろ部分から空気が入りやすいということです。
「えっ?」
後縁のポストダムって、封鎖を強化するって教科書に書いてありました。
しかし、大人になって考えてみると、変形する後縁部分の「反り」を保障していたのではないかとそちらがメインなのではと、勘ぐるようになりました。
デジタル化入れ歯では、完全重合体のプラスチックを削り出すために変形はありません。
適合精度は格段に上がります。
ポストダムの必要性から、デジタル入れ歯の優位性を見い出しました!
外れない入れ歯にはデジタル化が最適解だと確信しています。
全ては、患者さんの笑顔の為に・・・
下田孝義