―下顎前歯部の薄い骨への挑戦―

今回も、最近学んだ骨造成の新しいテクニックについてご報告します。

これまで、下顎前歯部のように骨幅が極端に薄いケースでは、なかなか適切な対応が難しい場面が多く、治療を断念せざるを得ないこともありました。
しかし今回、イタリアで「これは!」と思える骨造成法に出会いました。

このようなケース、一度は経験されたことがあるのではないでしょうか?

「えっ、このうっすい骨にどうやってインプラントを入れるの!?」と、思わず立ち止まってしまうような症例です。

ところが今回の術式では、一次手術で骨に“コの字型”の切れ目を入れ、6週間後に二次手術でインプラントを埋入するという方法が取られていました。

驚くことに、先ほどのような非常に薄い骨に、しっかりとインプラントが植立されていたのです。

「これはすごい…!」

眠気も吹き飛ぶほど、強烈なインパクトでした。

しかし…

その重要な術式を説明するスライドが無い…?

あるいは話されていたのに、私が聞き取れていなかったのか…

思わず「おーい、どうやったんだぁ…!」と、涙が出そうになる瞬間。

あまりに気になって、すぐに平山先生に確認。

すると、「これは昔からある方法で、〇〇だよ」と、さらっと教えていただきました。

 

さっそく帰国後に、私自身で一次手術を行いました。

骨に“コの字”の切れ目を入れ、次の手術で前方に骨を割り出し、インプラントを“サンドイッチ”するイメージです。

イメージとしては:

  • 一次手術:ダンボールにカッターで切れ目を入れる
  • 二次手術:その切れ目を折り曲げて広げる

そんな感覚です。

手術後、平山先生にご報告したところ、次のような返信をいただきました。

「これは、ボストンでもシャディ先生か、もしくはその上司クラスの臨床教授レベルのオペだよ。よくやったね!」

…と、お褒めの言葉。

「そんなに大変な術式なら、先に言ってよ〜」と思いつつも(笑)

話を聞いた瞬間に「自分ならできる」と感じて、つい動いてしまいました。

なぜ、私は「できる」と思ったのか。

理由を振り返ると、以下の4つに集約されるように思います。

  1. 正しい解剖学の知識
  2. 危険な部位を回避できる臨床的な技術力
  3. 類似手術の十分な経験
  4. 過去の実績から生まれる“確信”

8月に、いよいよ二次手術を行う予定です。

すべては、患者さんの笑顔のために。

下田 孝義

医療法人社団徹心会ハートフル歯科