痛くない噛める入れ歯を考える その②(型取り)
入れ歯の型取り=印象について
入れ歯の型取りをする時に、
・アルギン酸というピンクの粘土を使った型取り方法=低価格
・シリコン印象という、高精度の印象材=高価格
が、存在します。
そして、材料費の価格差によって自費治療用、保険治療用とよく言われています。
本当にそれで良いのでしょうか?
僕は、先日恩師の村岡秀明先生の講演動画を見て再認識したことがあります。
自費の入れ歯だから材料が違うというのなら、下記のような入れ歯の型取りは、シリコン印象で出来ません。
型取りの方法は、僕ならアルギン酸一択となります。
そこで今回は、型取りの材料について考察します。
アルギン酸印象の硬さは、自由自在。
柔らかめで練って、アンダーカット(骨のでっぱり)にあらかじめ入れて、少し固まってから、全体の型をとるトレーを口腔内に入れるなどテクニックを要しますが粘膜面が複雑な形態の場合は、有効です。
シリコン印象材は、硬さの違いで何種類かあるので部位ごとに使い分けが可能で、ある意味印象材(型取りの材料)を選択することで調整が可能です。
印象材の硬さのコントロールが簡単になります。
コスト:アルギン酸印象が有利
精度 :シリコン印象が、有利
印象材の高さのコントロール:シリコン印象有利
アンダーカットの粘膜面:アルギン酸印象有利
添付の写真は、アルギン酸印象でしか型取りがやりにくい症例です。
黒丸の所は、骨がでっぱっていることで可動してくる下顎の骨が邪魔してうまく型が取れないのが解剖学的な特徴です。
精度が高い特性の個人トレーでシリコン印象の型を取ろうとしても、下顎の骨に当たってしまいます。
こういう時は、アルギン酸印象でないと黒い部分の型取りが出来ないんです。
黒い部分の型が取りたくて、柔らかめに印象を練りました。
そうすると、青丸部分が口唇の圧に負けて全然型取りが出来ていません。
せっかく黒丸部分の方は取れたのに?「失敗」と感じてしまうかもしれません。
そんな時には、アルギン酸印象ならではの二重印象法に切り替えます。
前出の写真右側に写り込んでいる「テクニコールボンド」を一回目のアルギン酸印象面に塗布して、2回目のアルギン酸印象を注ぎ、再度口腔内に戻します。
そうすると…
このように青丸部分もしっかりと型が取れました。
アルギン酸二重印象というテクニックです。
アルギン酸は、硬さを自在に調整して2回に分けた入れ歯の型取りが可能です。
術者の技量に依存しますが、保険と自費の入れ歯を印象時の材料で決めるというよりも、「噛める入れ歯」を作るために最善な策を講じる
「噛める入れ歯」を作るために、必要な「印象、噛み合わせ、調整力」
術者の技量の3要素のうちの印象=型取りの材料について考察してみました。
前回のレジン=プラスチックの変形は、製作時の精度の高い入れ歯に関与し、歯科技工士さん側の問題として今後はフォーカスしていきます。
この後も入れ歯作りをあらゆる場面で考察していきたいと思います。
全ては、患者さんの笑顔の為に・・・
下田孝義