痛くない・噛める入れ歯 その⑫(無圧印象について考える)
総入れ歯の型どりには、無圧印象と加圧印象という二つの考え方があります。
僕は、基本的に加圧印象が好きなのですが、既存の義歯がない場合、一から入れ歯をつける場合など基本的な初期の段階の模型が必要となる為、無圧印象をしていきます。
ここの型どりにも、段階的にデジタル化されると思いますが、今回はアナログでの型どりについて書いていきます。
総入れ歯の基本的な大きさは、舌や頬、口唇の間で「邪魔」=「違和感を感じないような大きさ」にする必要があります。
一般的な方法であれば(ピンクの型どりの二重印象など)どうしても必要以上に粘膜を横、あるいは下方へ粘膜を押広げてしまい大きく違和感のある入れ歯の形となっていました。
また術者の手技、型どり用粘土の初期硬さや保持する力によって、1回1回かなり異なる形になってしまいます。
総入れ歯作りが難しい理由の一つがこの「押せば形の変わる粘膜の型を取らないといけない」からです。
兼ねてより、リムロッククトレーをこのように加工して(「誰にでもできる下顎総義歯の吸着」ヒョーロン参照)印象を行っておりました。(10年前より)
自作した枠なしトレーを用いてうまく印象が採れるようになると、噛み合わせをみる際に、“ そこそこ ” 吸着するろう提ができあがってきます。
ポイントは本にも書かれているとおり
『 柔らかめのピンクの粘土で、口腔内に満たし(シリンジを使って)、ピンクの粘土を少量盛った枠なしトレーを舌を上げてその下に忍び込ませるように口腔内に入れ,術者がトレーを保持して、閉口させてそっと硬化を待つ。』
枠なしトレーのイメージとしては、
[ アルジネートの中にトレーが浮遊しており、トレーはピンクの粘土を取り出すフレーム]
と考えるとわかりやすいと思います。
枠(トレー)で、圧をかけない型どり!
これは、「入れ歯の入る空間を記録し、口腔外に持ち出し再現する。」「その模型を起点として、噛み合わせを記録する装置を作製する。」ことで、
装置が入った時の具合の良さにつながり、普段通りの噛み合わせを記録できることにつながります。
結果、入れ歯の型どりという第一のステップが誰にでも可能になっていきます。
従来の「術者によって、型どりをするとその度に違う模型ができてくる。」という、再現性の低いやり方を改善することにつながります。
・口唇圧・頬圧・舌圧が非常に低いと、辺縁が厚めに採れてしまう。
・口唇圧・頬圧・舌圧が非常に強いと、辺縁が薄く採れてしまう。
誰にでも同じように型がとれる。これが理想の入れ歯作りの第一歩です。
枠なしトレーで印象採得した模型を使う事が「痛くない・噛める入れ歯」には、大切です。
そんな枠なしトレーも、今や既製品ができてきました。
自作時代が懐かしいですね!
もう、10年は経ちますね。
この使い方は、次のブログになります!
全ては、患者さんの笑顔のために・・・
下田孝義