痛くない・噛める入れ歯 その⑬「ピンクのプラスチックの硬化収縮の影響」
ピンクのプラスチックが、粘土状から固体に硬化する時に、2%の線収縮をする話は、以前書きました。そこで、その変形は、どう影響するのか、考えてみましょう!
入れ歯は、粘土状から固体に硬化する時に縮みます。
縮まったということは、小さくなります。
そういう時に、どうなるか!
入れ歯の断面を見てみましょう!
1.下顎の入れ歯なら、黄→青(上図)になるイメージでしょうか。
青矢印の方向に向かって入れ歯の内側が狭くなります。
窮屈なので入れ歯をはめると痛いということになります。
縮んだセーターを着るとキツイですよね。キツくて痛い!そう考えると分かりやすいと思います。
上顎でも辺縁が内側に入ってくるので入れ歯の周囲が痛くなります。
形とっても、元より縮んだ入れ歯ができたら、小さい入れ歯なら痛いのは当然です。
採算ミスではないかもしれませんが、スーツやドレスでいったら、縫製ミスとでも言いましょうか。
「ちょっとだから、調整しましょう!」
歯科医師の名人芸と言われるのですが
小さくなったものは、中々合わせづらいです。
内面を削っていけば、青→黄に戻るのでしょうが。均一に縮むわけもなく、髪の毛一本でも感じてしまう繊細な口腔粘膜の前では、調整こそヤスリ化となってしまいます。
2.上顎の後縁では、どうなっているのでしょうか?理想の入れ歯は、上顎粘膜にぴたっと沿う形でピンクのプラスチック部分が出来上がってきます。
しかし、ピンクのレジンは2%線収縮します。
そうすると距離の長いところほど大きな変化が起こります。
入れ歯だと、上顎の縦方向みどりの線が、1番距離が長く変化が著明に出てきます。
見て下さい。
理想の入れ歯は、もちろんぴったりしているのですが、実際の入れ歯では2%の線収縮によって硬化時に縮んでしまうことで、青線の方向に入れ歯が沿って来ることが分かります。
沿った分だけ入れ歯と粘膜の間に隙間が開いてくることが理解できるでしょう。
上記写真の黄色い線の部分に隙間が開いてきます。
総入れ歯は、周囲の粘膜と密着して、噛む瞬間に粘膜と入れ歯内面との間に陰圧を作り吸着します。
それは、上顎も下顎も同じです。
吸盤がガラス面に付く時も、周囲がピッタリして押した瞬間に貼り付きます。
凸凹した面では押しても吸着しません。
吸盤とガラス面は、ピッタリ適合していないといけませんよね。
上顎の後縁に隙間が空いていると、変形した吸盤と同じでいくら押しても吸い付かないことになります。
まさに変形した入れ歯は吸い付かない。
外れることになります。
入れ歯が外れるって、よく聞きますよね。
入れ歯は、粘土状→固体に硬化する際に必ず変形し、縮みます。
その縮むことを折り込んで製作する技工士さんと調整する歯科医師の名人芸で成り立つのですが、実際には難しい問題があります。
「入れ歯が外れる」という言葉をよく耳にします。
アナログからデジタルに製作方法が変わると固体のプラスチックを精密に削り出します。
または、3Dプリンターで出力します。
フィギュアとかで、見たことあると思います。
表情まだ細部を再現し、立ち姿がそったりしていませんよね。
そう、変形はしない技術があるのです。
車作り、おもちゃ作りには欠かせない。、CAD/CAM の技術。
コンピューターのテクノロジーを持ってすれば、カメラの映像を型にすることは既に可能な技術となってきています。
入れ歯も変形しないで立体的に作ることが可能な時代になりました!
これがデジタル義歯の世界です。
明るい未来がやってきます。
デジタル義歯は夜明け前です。
全ては、患者さんの笑顔のために・・・
下田孝義