17世紀ニュートンは、「リンゴは、木から落ちる」は有名な言葉残し「万有引力の法則」を発表しました。
 
「入れ歯も上顎から落ちる」ではどうにもなりません。
 
若い頃聞いた話では、入れ歯が落ちるよりも先に噛めば良いとか。(笑)なんて、冗談を言う先輩もいました。
 
しかし、落ちてほしくない入れ歯ですが落ちないのも不思議ですよね。
 
なぜでしょうか?
 
 
 
1.大気圧の影響
 
ガラスのコップに水を入れて逆さまにしたらどうなりますか?

透明なプラスチックの板は、コップにくっつくきます。
 
落ちていません。
 
 
 
 
これは、大気圧の影響です。
 
人は、地球の上で生きている間ずっと気圧に押されてるんです。
 
地表にかかる空気の重さっていうと、分かりやすいですかね。
 
高気圧、低気圧、ミリバールなどなじみの用語が出てきましたか?
 
その圧力を受けることで、ガラスのコップの水はこぼれ落ちません。
 
小学校の3年生で習います。
 
 
 
 
 

2.水の表面張力
 
水には、お互いを引きつける力があります。
 
水が丸い水滴を作ることやコップのお水が溢れる直前に少し盛り上がっている様子を見たことあると思います。
 
 
 
水分子同士は、くっつきあうのです。
 
こぼれそうな水は、お互いに引っ張りあう為こぼれ落ちません。
 
少しオーバー気味にならないと溢れない理由です。
 
 
 
 
表面張力があるから、水滴は丸くなります。
 
 
 
その表面張力を利用して、カバーガラスはスライドガラスにくっつきます。
 
小学校5年生の時にスライドガラスの中のミジンコを顕微鏡を使って、観察しましたよね。
 
 
 
3、唾液の存在
 
水分は入れ歯が落ちないことに関与していることがお分かりかと思います。
 
入れ歯が落ちないためには、唾液が必要です。
 
逆に、入れ歯の外れる理由の一つに、加齢による自然な唾液量の減少があることも当然の流れとなります。
 
高齢者の場合、加齢変化で唾液の分泌量が減ることも事実です。
 
また、色々な疾患をお持ち方も多く、薬の影響もあります。
 
血圧を下げる薬や、抗アレルギー薬、睡眠薬、抗うつ薬などには、唾液の分泌を抑制するものがあります。
 
唾液の分泌が少なくなれば、入れ歯が外れやすくなり、乾燥すると擦れて痛みがでやすくなります。
 
唾液は入れ歯と粘膜面の間の潤滑油の役割もしています。
 
入れ歯がくっつくのは、水の力が大きいことがよく分かった事と思います。
 
・辺縁の封鎖が良い=大気圧で、落ちにくい
・粘膜との適合が良い=水の表面張力が働く
・唾液がでる=水がないと落ちてしまう
 
実際には、噛む事で入れ歯が垂直に沈下します。
 
その結果、唾液が抜けて入れ歯と粘膜面に陰圧がかかり吸盤の要領で上顎の粘膜に吸い付きます。
 
入れ歯がくっつくには、科学的な裏付けがあるのです。
 
私たち歯科医師は、サイエンティストです。
 
入れ歯が落ちない理由を知る事で、落ちない入れ歯の作り方を論理的に考えいます。
 
・入れ歯には、入れ歯らしい形が必要
・垂直的に噛む力がかかるような噛み合わせが大切
・粘膜と適合の良い入れ歯=変形ゼロの義歯
 
3つの要素をつないで、落ちない入れ歯は作られます!
 
 
全ては、患者さんの笑顔のために・・・
 
 
下田孝義
医療法人社団徹心会ハートフル歯科