4月から新しい研修医の先生が来てくれました。

ハートフル歯科では、毎年この時期になると「外科修行」が始まります。

といっても、いきなり患者さんの口の中でメスを持つわけではありません。

まずは基礎の基礎から。

4月・5月は週4回、朝9時から30分。

診療前の朝勉強会で、ドクターマニュアルを使いながら、国家試験には出てこない臨床の工夫や考え方を伝えていきます。

国家試験は合格した。

でも、本当の意味での歯科医師人生はここから始まります。

初診の問診、プラスチック治療、根管治療、小さい銀歯、大きい銀歯など続きます。

一般歯科のイロハを順番に習います。

僕の得意技は、外科とCAD/CAMです。

外科は1年かけて理解を深めます。

CAD/CAMは、夏までに普通の虫歯治療を見て、後半から、CAD/CAMとの違いを学びます。

そのためにCAD/CAM研修日が夏にあります。

今やっているのは、一般歯科研修の

最後の課題が、「縫合」

外科の基本技術の一つが縫合です。

縫合で大切なのは、

「結ぶこと」

ではありません。

まずは、

正しい運針(うんしん)

です。

持針器の持ち方

フォアハンド。

バックハンド。

針の角度。

手首の返し方。

針先の動かし方。

これをタオルを歯肉に見立てて、ひたすら練習します。

写真のように、まずは机の上で何十回、何百回と同じ動きを繰り返します。

地味です。

本当に地味です。

でも、この反復練習が後々大きな差になります。

本番は全く違う

タオルの上では簡単に見えます。

ところが患者さんのお口の中に入ると話は別です。

唇がある。

舌が動く。

頬が邪魔をする。

隣の歯が当たる。

視野は狭い。

しかも患者さんは緊張しています。

「タオルの上ならできたのに・・・」

という状態からスタートします。

みんな最初はそうです。

私もそうでした。

四苦八苦しながら、一針一針進めていきます。

技術は才能ではなく反復

若い先生を見ていて感じることがあります。

外科が上手な先生は、最初から器用だったわけではありません。

上手な先生ほど、

見えないところで練習しています。

運針も、

形成も、

縫合も、

反復した人が強い。

スポーツと同じです。

野球選手が素振りを繰り返すように、

ピアニストがスケール練習を繰り返すように、

歯科医師も基本動作を繰り返します。

その積み重ねが手に残ります。

3月まで続く小口腔外科修行

ハートフル歯科の研修は1年かけて行います。

縫合だけではありません。

抜歯

切開

剥離

縫合

感染管理

診断

術後管理

患者さんへの説明

小口腔外科に必要な考え方を少しずつ身につけていきます。

そして最終的には、

「安全に治療できる歯科医師」

になることを目標にしています。

歯科医師は一生勉強

患者さんから見ると、

歯科医師は最初から何でもできるように見えるかもしれません。

しかし実際は違います。

私自身も卒業してから何十年経った今でも学び続けています。

新しい材料。

新しい技術。

新しい考え方。

学びに終わりはありません。

だからこそ、若い先生が一生懸命タオルに向かって運針している姿を見ると応援したくなります。

数か月後にはぎこちなかった手つきが変わり、冷や汗がなくなり、余裕が出てきます。

1年後には自信を持って縫合しているはずです。

その成長を見るのも、指導する側の楽しみの一つです。

今年の研修医の先生も、ここから長い外科修行が始まります。

焦らず、一歩ずつ。

まずはタオルの上の一針からです

下田孝義
医療法人社団徹心会ハートフル歯科