ある介護施設のアンケート調査では,「日常生活の一番の関心事は、食事である」という結果であった。

高齢者には、「食事」を味わって、会話を楽しんで、食べることがとても重要である.

口腔の役割、口から噛んで食べることの意義、誤嚥性肺炎予防と口腔ケアについて考えてみた。

食事が噛んで食べられること
口から食べると味わって楽んで食事をすることができる。食事をする時には、怒る人は少ない、特に美味しいものを食べていると副交感神経優位になり唾液分泌が促進する効果がある。

歯でしっかりと噛むことによる機械刺激によっても、唾液分泌が促進される。食事の時は、唾液と一緒に口腔内の細菌も飲み込んで消化する(自浄作用)。

ところが 血管に直接栄養を点滴で流したり、胃瘻などの栄養管理で経口摂取(噛んで食事)をしなくなると、咀嚼による自浄作用がなくなり、唾液分泌が極端に 減少し口腔内が乾燥する。

口から食べて胃液が分泌することは、自然なことであるが、経口摂取しないと精神的ストレス,胃腸障害,消化管を使わないことによって廃用萎縮が起こってしまう。すると、誤嚥性肺炎が起こりやすくなる。口腔ケアが機能的に働くと誤嚥性肺炎も予防できる。だから、自分の歯で噛んで食事をすることが重要なのです。

口腔は細菌培養器

口腔内は、「温度,湿度,栄養,酸素」という細菌培養するのに必要条件がそろっており、いわば口腔内は最大・最強の細菌培養器といえる。だから、口から食事をとっていなくても細菌は繁殖するため、点滴による栄養摂取、胃瘻の患者にも口腔ケアは必要である。

口腔内が汚いと 1 兆個近い細菌 が生息することにある。細菌達は、自ら産生する菌体外多糖(粘着性多糖体)によって覆われ,フィルム状に強固に歯牙表面に付着して増殖する。このような状態をバイオフィルム(口腔内のぬめり感を演出します。)と言う。このバイフィルムが、むし歯や歯周病の原因となるのでsる。しかも、抗菌剤は浸透しないため効果がなく、基本的に、物理的除去(機械的な口腔ケア)のみ有効である 。歯周病原性バイオフィルムを取り除くには、機械的に取り除くスケーリングや,ルートプレーニングを凌駕す るものはなく。歯科医師あるいは歯科衛生士の卓越した手技によってでしか除去ができない。だから、定期的な歯科医院の来院でバイオフィルムの除去の必要性があるんです。

こんな記事も見かけました。

https://news.goo.ne.jp/article/otonanswer/life/otonanswer-61985.html

超高齢者を取りまく口腔内の環境は、現状では厳しいものがある。

歯科医師や歯科衛生士による定期的な口腔ケアを行った人は、むし歯や歯周病以外にも肺炎の発生率、肺炎による死亡者数、発熱者数 が有意に低くなると言われている。認知機能の低下も抑制されたという結果を得ている。

さらに、口腔ケアはインフルエンザの発症率を低下させるという報告もされている 。口腔ケアが感染症の予防法として有効であることを示している。

口の中が不衛生になり、細菌が増えてしまうと、一部の細菌が産み出す物質(プロテアーゼなど)が、粘膜免疫機能を破壊してしまうことがわかっています。粘膜免疫は、口から入った病原体が粘膜に付着すると、全身免疫に情報を送るのと同時に、付着した粘膜近くのリンパ組織を介して、病原体の侵入を阻止する物質(分泌型IgA)を唾液中に分泌し、素早く病原体に対応します。ウイルスは喉や気管の粘膜で増殖するため、この粘膜免疫は感染予防に非常に有効です.

また、飲み込む機能が弱っているご高齢の方では、唾液に混ざった細菌が肺に入り、肺炎を引き起こすことも知られています。

口腔ケアを通して呼吸器感染症の予防、摂食・嚥下障害の改善、ADL(日常動作=起居動作・移乗・移動・食事・更衣・排泄・入浴・整容の動作)、QOL (人生の質)の向上のみならず入院期間短縮、入院費用の節約など歯科医院が貢献できることを強調したい。

自分の歯で食事をする
口腔ケアの必要性

それが健康寿命を伸ばし、人生の質を向上させることとなる!
「食事」を味わって、会話を楽しんで、食べることがとても重要である. それが「生きがい」になる。

全ては、患者さんの笑顔のために・・・

PS:そういえば、1月に他界した父は、1年くらい前より食欲がなくなっていた。食べたくないって。どんどん痩せていった。
「生きがい」がなくなっていったんだろうなぁ。
もう分かっていたんだろうなぁ。

 

医療法人社団徹心会ハートフル歯科