痛みのある方が初診でいらっしゃいました。

レントゲン写真の右下奥を見てください。

元々2根あった右下第一大臼歯を半分に切り、抜歯して残った半分の根っこを利用したブリッジをしている患者さん。

「そのブリッジの歯が痛い」との主訴でした。

半分の歯にブリッジの力をかけているので、金属心棒(土台)の存在も含めて、「破折」を僕らは疑います。

破折は、レントゲンで見えないことも多くあり、慎重に診断をしていきます。

前医からは、すでに破折しているか、心棒(土台)を抜く時に破折するかも。

レントゲンだけ見て、「破折しているので抜歯です。」と言われたそうです。

前医では、結局なにもせず「投薬のみ」だったそうです。

初診時は、色々過去の経緯を聞き、とりあえず様子をみたいと帰宅されました。

数日後、やっぱり痛いと来院。

“どうなっているのか?分からない?
痛みがあるなら、治療しましょうよ!”

“本当に割れているのか、冠を壊して外してみましょう。”

“割れていたら、マイクロスコープでしっかりとお見せしますね!何もなければ、心棒(土台)を入れ替えて、新しくブリッジの作り直しをしましょう。”

“まずは、痛みの原因を探しましょう。”

とブリッジを壊しました。

ブリッジを壊そうと奥の歯との間で切断すると、
歯が割れている場合、手前の小さい歯から心棒(土台)ごとポロリと外れる事が多いのですが・・・そのままでした。

グラグラもなくしっかりした心棒(土台)がありました。

破折していないかも?
それよりも、偽物の歯の真下の歯肉から出血が。そして異常な陥没!

半分の歯を抜いた後、あまり歯肉の治癒を待たずにブリッジを入れると、歯肉の回復が後から起こり、数年後歯肉に埋もれた偽物の歯になる事があります。

結論、“偽物の歯の下は、歯ブラシが届かずに炎症を起こしたのかな”と診断をしました。

心棒(土台)を外す時に破折する可能性もあるので、

まずは心棒(土台)は残しておきました。

偽物の歯の下の歯肉炎症ならブリッジを壊せば痛みが収まります。

その上で、心棒(土台)を取るリスクや、残すリスクを話して治療を進めようと思っています。

ハートフル歯科では、痛みの原因を探り、マイクロスコープやCTで映像を見せながら、しっかり説明する事を医院ルールとしています。

銀歯やブリッジも、ハッキリと痛みの症状があれば、前向きに除去して痛みの原因をしっかり見つける事を歯科医師の使命だと話しています。

歯の病気は、自然治癒は、ほとんどありません。

臭いものに蓋をすることなく、原因の究明に力を注ぐようにしています。

今回は、「痛みがある」という症状に対してしっかり向き合い、抜歯の可能性もあるが直すこともできるかもしれないと前向きに励ますことで治療に臨んでもらえました。

「傾聴→共感→励まし→治療」と進めた結果、今のところ抜歯に至らない治療経緯となっています。(嬉しい)

レントゲンだけ見て、積極的に抜歯です。とは、言えません。

患者さんには、それぞれ思いがあるからです。

結局、抜歯の診断になったとしても、その前に充分な治療や診断を理解する過程、方法があるはずです。

1本づつの歯にも命がある。

“なるべく歯質を残し”
“なるべく神経を残し”
“なるべく根っこを残す”
“歯がなくなっても、噛み合わせを残す”

「歯を残す」ことにまずはこだわり、診断を行っていきたいと思っています。

設備が治療を変える。と僕は、よく書きます。

しかし、「治療方針が全てを変える。」と言う大前提を書き忘れていました。

医院理念
「痛くない、削らない、抜かない」
予防ベースの歯科治療

患者さんが、生涯自分の歯で食事ができる様にサポートしていきます。

全ては、患者さんの笑顔のために・・・

下田孝義

医療法人社団徹心会ハートフル歯科