GBR後に傷口が開いた場合、どのように治っていくのか
インプラント治療を行うために必要な骨の厚みや高さが不足している場合、「GBR(骨誘導再生法)」という骨を増やす治療を行うことがあります。
GBRでは、骨を増やした部分を歯肉で覆い、できるだけ外部から隔離した状態で治癒を待ちます。
しかし、術後に歯肉の傷口が一部開いてしまうことがあります。これを「創部の裂開」と呼びます。
なぜGBR後に傷口が開くことがあるのでしょうか
GBRでは、骨を増やした部分を歯肉で完全に覆う必要があります。
そのため、歯肉に「減張切開」を加えて、歯肉弁を移動させたうえで縫合することがあります。
十分な骨造成量を確保しようとすると、歯肉を大きく移動させる必要があり、縫合部には一定の負担がかかります。
もちろん、傷口が開かないように丁寧な減張と縫合を行いますが、術後の腫れ、歯肉の厚み、血流、縫合部に加わる力などによって、完全には避けられない場合があります。
傷口が開いたら、すべて失敗なのでしょうか
GBR後に傷口が開いたからといって、直ちに治療全体が失敗したとは限りません。
大切なのは、露出した部分に細菌感染を起こさせないことです。
今回の症例では、GBRと同時にインプラントを埋入していませんでした。
インプラントが入っていない段階的なGBRでは、万が一傷口が開いた場合でも、感染を抑えながら経過を観察できる余地があります。
投薬と口腔内の消毒を続けながら経過を観察しました
今回の症例では、GBR後に創部の一部が裂開しました。
感染の拡大を防ぐため、約2週間の投薬を行い、うがい薬による口腔内の消毒を続けていただきました。
傷口を無理に閉じようとするのではなく、創部を清潔に保ちながら、骨と歯肉が自然に治癒できる状態を維持しました。
その結果、露出していた部分には徐々に新しい組織が形成され、傷口は小さくなっていきました。
最終的には、骨と歯肉が安定できる位置で折り合いをつけるように、創部が閉鎖する方向へ進みました。
「裂開=すべて失敗」ではありません
GBR後の裂開は、できる限り避けるべき術後合併症です。
裂開の大きさや使用した材料、感染の有無などによっては、造成した骨の一部を失ったり、追加処置が必要になったりすることもあります。
一方で、今回のようにインプラントを同時埋入しておらず、感染を適切にコントロールできた症例では、自然治癒を待てる場合があります。
重要なのは、次の点です。
- 傷口を清潔に維持する
- 必要な投薬を行う
- 指示されたうがい薬を使用する
- 創部を舌や指で触らない
- 定期的に状態を確認する
- 腫れや痛み、排膿などの変化を見逃さない
GBR後の傷口が開いた場合、自己判断で様子を見るのは危険です。
早い段階で状態を確認し、感染の有無や露出範囲に応じて対応することが大切です。
GBRでは「起きた後の管理」も重要です
外科治療では、合併症を起こさないための手術技術が重要です。
同時に、予期しない裂開が起きた場合に、感染を防ぎながら治癒へ導く術後管理も欠かせません。
GBRでは傷口の見た目だけで判断せず、歯肉の状態、感染の有無、造成部の安定性を継続的に確認します。
今回の症例は、裂開が起きても慌てて処置を加えるのではなく、感染を抑えながら組織の治癒力を生かすことで、創部が徐々に安定していった一例です。
※治癒経過には個人差があります。裂開の大きさ、感染の有無、使用した骨補填材やメンブレンなどによって、必要な処置と治療結果は異なります。
下田孝









