歯科治療は「入れる技術」だけでなく、「外す技術」も非常に重要です。

特に研修医の先生が最初に苦労するのが、銀歯(全部鋳造冠)の除去です。

一見すると、

「切れ目を入れてこじれば外れる」

と思いがちですが、実際にはそんなに簡単ではありません。

よくある失敗パターン

まず頬側から切削して切れ目を入れます。

その後、マイナスドライバーやクラウンスプレッダーを使って広げようとすると…

「全然開かない!」

という状況になります。

すると、

さらに削る

さらに削る

さらに削る

という泥沼に入ります。

除去した銀歯を見るとよく分かります。

切れ目は入っているものの、歯頚部(歯ぐき側)の金属がまだつながっているのです。

その状態ではいくらドライバーでこじってもクラウンは開きません

結果として不要な切削量が増えます。

銀歯はどこを切るべきか?

ポイントは

歯ぐき側まで完全に切り切ること

です。

咬合面や中央部だけ切れていても意味がありません。

実際には歯頚部のわずかな金属が残っていることが多く、そこが最後の抵抗になります。

今回の症例でも、赤丸部分の金属をもう少し切削しておけば、はるかに簡単に除去できたはずです。

ここを理解しているかどうかで、除去時間は大きく変わります。

削らずに外す方法もある

最近は私も状況によっては

ワムキー(WamKey)

を使用します。

ワムキーは、土台(コア)と銀歯の境界部に専用チップを挿入し、回転させることで作用反作用の力を利用して除去する器具です。

イメージとしては、

「テコの原理を利用して持ち上げる」

ような感じです。

ワムキーの優れている点

最大のメリットは、

歯根方向に過大な力をかけないこと

です。

銀歯を無理に壊す方法では、歯根破折のリスクがあります。

しかしワムキーは、クラウンとコアの境界で力を発生させるため、歯根へのストレスが少なく、非常にスマートに除去できます。

実際に除去後の銀歯を見ると、大きく変形することなく外れていることが分かります。

研修医の先生へ

銀歯除去は単なる作業ではありません。

  • どこが切れ残っているのか
  • なぜ外れないのか
  • どの方向に力をかけるべきか
  • 歯根に負担をかけていないか

を考えながら行うことで、技術は一気に上達します。

「削る量を増やす」

のではなく、

「どこがつながっているのかを見抜く」

ことが大切です。

そして、

歯質を削らずに外せる歯科医師ほど上手い。

私はそう思っています。

ハートフル歯科の朝勉強では、こうした国家試験には出てこない臨床のコツを一つひとつ伝えています。

外科も補綴も同じですが、上手な先生ほど力任せではなく、理屈で治療をしています。

ハートフル歯科では、スマートな歯科医療を目指します。

下田孝義
医療法人社団徹心会ハートフル歯科