先日、厚生労働省が示している歯科医療の将来推計について、医局の勉強会でお話を伺う機会がありました。

その中で印象的だったのが、2040年に向けた歯科医療の考え方です。

日本では2040年頃、高齢者人口がピークを迎えると予測されています。

一方で、歯科医師の供給数そのものは、歯科医療需要をやや上回る可能性があるとされています。

しかし、ここで大切なのは、

「歯科医師が余る」という単純な話ではない

ということです。

地域によって高齢化率は違いますし、交通事情や通院のしやすさも異なります。

さらに、現在開業している歯科医師自身も高齢化しており、今後すべての歯科医院がそのまま存続するとは限りません。

だからこそ、これから重要になるのは、

どんな歯科医療を提供できるか

だと考えています。

高齢者歯科医療の目的は

「噛めることを守る」

これまでの歯科医療は、

「虫歯を削る」
「悪くなった歯を治す」

という治療が中心でした。

しかし、高齢者医療では考え方が少し変わります。

高齢者にとって大切なのは、

今ある“噛める状態”を、できるだけ長くKEEPすること

です。

歯があるだけでは十分ではありません。

歯周病が進行してグラグラしていれば噛めません。

歯を失ったまま欠損を放置しても、噛む力は低下します。

義歯やインプラントが入っていても、メンテナンスされなければ長く使うことはできません。

つまり、高齢者歯科医療では、

「治療すること」そのものがゴールではなく、治療した後も噛める状態を維持することがゴール

なのです。

まずは歯周病を予防する

噛める状態を守るための第一歩は、歯周病予防です。

歯周病は、成人が歯を失う大きな原因の一つです。

痛みが少ないまま進行することも多いため、定期的な検査とメンテナンスが重要です。

まずは歯周病にならない。

あるいは、歯周病が軽いうちに発見して進行を抑える。

これが、高齢になってからも自分の歯で噛むための基本になります。

改善しにくい歯周病には、新しい治療も

一方で、定期的にメンテナンスを行っていても、歯周ポケットが改善しない方もいます。

そうした場合には、従来の歯周病治療だけでなく、新しい治療技術を検討する時代になってきました。

当院では、歯周病治療の新しい選択肢としてブルーラジカルにも注目しています。

大切なのは、ブルーラジカルを行うこと自体ではありません。

治療によって歯周病の状態を改善し、その後のメンテナンスにつなげ、

再び悪くならない状態を維持すること

が本当の目的です。

つまり、

歯周病治療 → 改善 → メンテナンス → 再発予防

までを一つの流れとして考える必要があります。

できる限り歯を残す

歯周病管理の次に重要なのが、できる限り歯を残すことです。

一本の歯を失うと、隣の歯や反対側の歯にも負担がかかります。

噛み合わせが変化し、さらに別の歯を失う原因になることもあります。

そのため、

「悪くなったからすぐ抜く」のではなく、残せる可能性がある歯はできるだけ残す

ことが大切です。

ただし、無理に残すことが必ずしも正解とは限りません。

保存できる歯と、将来的に問題になる歯を正しく見極めることも重要です。

歯を失ったら「欠損を放置しない」

歯を失った後の対応も非常に重要です。

「一本くらいなくても噛めるから大丈夫」

と、そのままにしてしまう方は少なくありません。

しかし、欠損を長期間放置すると、

残っている歯に負担が集中したり、歯並びや噛み合わせが変化したりする可能性があります。

その結果、さらに歯を失っていくこともあります。

だからこそ、

欠損を放置しない

という考え方が大切です。

インプラントも「噛める状態を守るため」の選択肢

歯を失った場合には、

  • 入れ歯
  • ブリッジ
  • インプラント

など、さまざまな治療方法があります。

どの治療が最適かは、患者さんの年齢、残っている歯の状態、全身状態、噛み合わせなどによって異なります。

インプラントも、単に「歯を入れる治療」ではありません。

残っている歯への負担を減らし、

口全体でしっかり噛める状態をつくり、長く維持するための治療

として考えることが重要です。

これからの歯科医療は「治す」から「KEEPする」へ

2040年に向けて、歯科医療の役割はさらに変化していくと思います。

虫歯は、なくなっていくので、

これから大切になるのは、

歯周病を予防する

歯周病を管理する

必要に応じてブルーラジカルなどで治療する

メンテナンスを続ける

歯をできるだけ残す

欠損を放置しない

必要に応じてインプラントなどで補う

噛める状態をKEEPする

という流れです。

高齢者歯科医療の目的は、

治療をたくさんすることではありません。

人生の最後まで、

「食べられる」
「噛める」
「自分の口で食事を楽しめる」

状態を守ることです。

ハートフル歯科医院では、これからも

「歯を治す歯科医院」から、「噛める人生を守る歯科医院」へ

という考え方を大切にしていきたいと思います。

噛めることは、生きること。

そのために、歯周病予防からメンテナンス、歯を残す治療、そして必要に応じたインプラント治療まで、一つの流れとして考えていきます。

下田孝義

 

医療法人社団徹心会ハートフル歯科