2040年、日本の歯科医療は大きな転換点を迎えます。

人口が減少する一方で、高齢者、とくに85歳以上の患者さんは増えていきます。歯科医療に求められる役割も、むし歯を削って詰める治療から、歯を残し、欠損を放置せず、生涯にわたって「噛める状態」を維持する医療へと変化していきます。

厚生労働省の推計では、仕事量を補正した歯科医師の供給力は、2025年の約11万人から2040年には約9万9,400人まで減少するとされています。

ただし、問題は単純な人数だけではありません。

地域による偏在、若手歯科医師の減少、勤務医不足、訪問歯科への対応、そして高度な治療を担える歯科医師の育成。必要とされる場所で、必要とされる治療を提供できる歯科医師が不足することが、これからの大きな課題です。

研修施設ならどこでも同じではありません。

近年、歯科医師臨床研修施設は増えています。

しかし、研修施設として認定されているだけで、若手歯科医師が自然に集まり、成長していくわけではありません。

大切なのは、研修医を単なる診療補助や雑務の担い手として扱うのではなく、歯科医師としての未来を見せることです。

ハートフル歯科では、研修後も希望者が勤務医として成長できる環境を整えてきました。現在勤務する歯科医師の6人中5人が、当院で研修中、卒業した歯科医師です。

これは、採用の数字だけではありません。

一緒に働き、診療に向き合い、成長を見守ってきた時間の積み重ねです。

若手に症例を渡し、責任を持って育てる

歯科医師は、見学しているだけでは成長できません。

診断を共有し、治療計画を一緒に考え、基本手技を身につけたうえで、段階的に症例を担当する必要があります。

当院では、一般歯科だけでなく、CAD/CAMを活用したデジタル歯科治療、自費補綴、インプラント治療まで学べる環境を整えています。

インプラント教育では、最初から一人で任せることはありません。

診断と治療計画を指導医と共有し、外科の基本手技を確認したうえで、X-Guideなどのデジタル機器も活用します。経験豊富な歯科医師が前立ちとなり、患者さんの安全を守りながら、若手に実際の経験を積んでもらいます。

「症例を渡すこと」と「丸投げすること」は、まったく違います。

若手に挑戦の機会を与えながら、最後の責任は指導する側が持つ。それが、私たちの考える歯科医師教育です。

若手を育てることが、患者さんの未来を守る

患者さんにとっても、若手歯科医師の育成は重要です。

院長一人だけが高度な治療を行える医院では、その院長が診療を縮小したとき、同じ治療を継続できなくなります。

診断の考え方、治療技術、患者さんへの向き合い方を次の世代へ渡していくことで、10年後、20年後も患者さんの「噛める生活」を守ることができます。

設備や建物だけが、歯科医院の資産ではありません。

大学や医局との信頼関係、積み重ねてきた症例、教育の仕組み、そして育った歯科医師たちこそが、本当の資産です。

2040年に必要とされる歯科医院へ

2040年に強い歯科医院とは、規模が大きい医院でも、最新設備を並べただけの医院でもありません。

患者さんの歯を守り、噛める状態を維持し、その医療を次の世代へ継承できる医院です。

研修施設の認定を持つ医院は、これからも増えるかもしれません。

しかし、若手歯科医師に症例を渡し、失敗のリスクを先輩が引き受け、技術と考え方を段階的に育てられる医院は、それほど多くありません。

私たちは、若手歯科医師に

「ここで働いた先の未来」

を見せられる医院でありたいと考えています。

2040年に向けて、患者さんの未来と、若手歯科医師の未来を同時に育てる。

それが、ハートフル歯科の果たすべき役割です。

下田孝義
医療法人社団徹心会ハートフル歯科