先日、バイコンインプラント周囲への遊離歯肉移植(FGG) を行いました。

患者さんは、インプラント補綴後、

「歯ブラシがうまく当たらない」
「周囲の歯肉がプニプニして磨きにくい」

という状態でした。

インプラントと骨の状態は安定していました。

しかし、私は最終的に、

「角化歯肉を確保した方が良い」

と判断し、補綴物を外して歯肉移植を行いました。

なぜでしょうか。

インプラントは「骨」だけでは長持ちしない

インプラント治療というと、

  • 骨があるか
  • 骨造成が必要か
  • インプラントが結合したか

に目が向きがちです。

もちろん、骨は大切です。

しかし、長期経過を見ていると、もう一つ重要な要素があります。

それが、

「周囲軟組織」

特に、

角化歯肉(動かない、丈夫な歯肉)です。

可動粘膜の「プニプニ問題」

骨造成後にインプラント周囲に角化歯肉が不足しがちで、結果、可動粘膜がヒーリングアバットメントや補綴周囲まで近づいてきます。

すると、

  • 歯ブラシ時に痛い
  • 歯肉が動く
  • 患者さんが磨きにくい
  • 清掃が不十分になる

という問題が起こります。

私はこれを、

「プニプニ問題」

と呼んでいます(笑)。

患者さんは正直です。

磨きづらい場所は、自然と磨かなくなります。

→結局、磨けない、汚れがたまる。

メインテナンス性の低下。そして、長期的には、炎症や排膿、骨吸収につながります。

バイコンインプラントと角化歯肉

私はバイコンインプラントを長年使用しています。

バイコンは、

  • ショートインプラント
  • Bone Gain
  • 生体との調和

を重視したシステムです。

だからこそ、

「骨ができたから終わり」

ではなく、

「患者さんが長く維持できる環境」

まで考えたいと思っています。

骨が安定していても、

患者さんが痛くて磨けない。

清掃しづらい。

それでは、本当の意味で長期安定とは言えません。

今回行った処置

今回の症例では、補綴後に角化歯肉不足が問題となりました。

そこで、反対側口蓋粘膜から、上皮付きの遊離歯肉移植(FGG)を採取。

脂肪組織を丁寧にトリミングし、インプラント周囲へ移植しました。

採取部は、テルダーミス(シリコン面)で保護しています。

目的は、単なる見た目ではありません。

「患者さんが、気持ちよく歯ブラシできる環境を作ること。」

です。

バイコンインプラント周囲において、角化歯肉は「絶対条件」とまでは、言われていません。言えないかもしれません。

しかし、恩師は、歯周病の観点から、インプラント周囲の角化歯肉は、必須だと 25年前に言い伝えられています。

私は長期予後の観点から、

「患者さんが清掃しやすい角化歯肉環境」

を重視しています。

インプラント治療は、単に手術でインプラントを埋めること、噛めることがゴールではありません。

患者さんが10年後、20年後も、快適に磨け、噛む機能を維持できること。

そこまで含めて、理想的な治療だと考えています。角化歯肉については、標準的に全ての歯科医院がそこまで考えているか分かりません。

ハートフル歯科医院
~削らない、痛くない、健口で豊かに生きる~

歯磨きしにくいインプラント周囲の歯肉は、正義だと思いません。
可能な限り、角化歯肉のことを考えて治療を行っています。

下田孝義

医療法人社団徹心会ハートフル歯科